次の文章を読んで、1~20の問に答えなさい。答えは選択肢A:B:C:D:からもっとも適切なものを一つ選びなさい。
#だれにも会いたくない。少しも口を利きたくない。( 1 )ただ一人でじっとしていたい。そういう気持ちのときがしばしばある。これは意気阻喪のときではなく,情意沈潜のときである。
わたしは純白か漆黒かの尾の長い猫【ア】なら、見当り【イ】次第何匹でも飼いたいと思っている。( 2 )、室内にとじこめられたペット用の外国産のものではなく、自由に戸外を駆け回る野性的な日本産種のほうがいい。尾の短いのは人工的でいけなく、尾の長い自然的なのが【ウ】最高だ。
( 3 )、何故に猫か。猫は飼養動物のうちでもっとも人間に近い生活をしている。屋内に人間と同居し、同じ食物を食べ、同じ寝具に眠る。用があり、( 4 )喉を鳴らしてすり寄って来るが、そうでなければ、呼んでも返事をせず、【エ】すまして他所( 5 )向いている。猫は人の顔色を読むと【オ】いわれているが、往々、もっともよく人間の顔色を無視する。そして庭の隅や、縁側の片端や、机上などに、ただじっと蹲って一人で夢想している。そうした夢想の中に、肉食獣としての本来の野性がある。【カ】猫のうちには馴服され( 6 )何物かが残っているとわたしには思える。
それを、わたしは自分のこととして感ずる。人に会いたくなく、口を利きたくなく、一人でじっとしているとき、その沈潜しているわたしの情意は、道徳的な習慣的な、換言すれば世間的な一般的なものであって、その底には、胸の( 7 )に潜む野性的なものが存在する。それは猫の馴服と同様に、人間の道徳や習慣では完全に覆うことのできない何物かが存在するのである。そしてその野性的な何物かの中にもっとも多くの芸術の萌芽がある。
芸術が一種の創造であるという要素は、この馴服されない野性的な深い何物かの上に建設される( 8 )にある。この建設のない場合、芸術は創造的要素を失い、生命力が【キ】希薄になる。
猫の野性は、その柔軟温順な外観から( 9 )ところに存在していて、こうした野性は内心的なものであって、猫の夢でもある。その内心的なものに対する驚異と恐怖とから、猫に関する伝説が生まれる。猫に関する迷信的伝説は道徳的な美の外側にあるものが多く、( 10 )それが報恩とか復讐とかいうことから発したものであったとしても、それは( 11 )独自の展開をなして、不思議な力を発揮する。( 1 )~( 11 )に入れるのにもっとも適切なものはどれか。
1、